前回家具の組み立ては70%までは別の場所で組み立てたほうが良いとお話ししました。https://ikea-dekiru-dental.com/sika-ikeakichen-bunrihatuu/
今回はその続きになります、組み立ての後は取付です。
本日は歯科医院の家具工事の取り付けについて書きたいと思います。こんなことは業者に任せておけばよいとこの記事を読まない先生と、こんな感じなんだと知っている先生とでは協力業者さんとの距離感が大きく違ってきます。工事の予算計画の中でも大きな金額がかかる家具工事が、どうしてその金額になるのかを知ることは、家具工事以外のほかの工事についても知ることにつながります。ここから家具だけではなく、それまで当たり前だと思っていたことも変えていけるのではないでしょうか。よりよくしなければならない部分には予算を大きく取り、それ以外の部分は予算をかけないやり方を考える。強弱をつけることは、物語の起承転結を考えるのと同じです。クライマックスだけでは物語は面白くなりません。事業計画も同じです、まずは軌道に乗せるために何をするか軌道に乗ってきたら次は・・・。といった感じでここで書いている家具の話は先生方の物語の一場面でしかありません、でもそれがなければ物語が始まらないのです。自分の人生の物語だと思って読んでいただけたら、きっと業者さんとの交渉にも役立つ時が来ます、知識の武装に際限はありません。
前置きはさておき
歯科医院での家具取付についての順番を並べてみるとこんな感じです
1 床の養生
2 家具の搬入
3 各セクションへの配布
4 家具取り付け
5 電気、給排水設備の取り付け
6 クリーニング
7 医療機器の設置とその付帯工事
8 最終備品の取付
9 完了 以後の調整
大まかにはこんな流れになります。
1 床の養生
70%まで組み立てた家具を搬入するのは、壁紙や床材が仕上がった状態の工事中の医院になります。新築の場合も改装工事の場合も同じです。なので大量の家具を搬入する前に家具を置く床と家具の保護のために床に養生のシートを敷きます。私たちはホームセンターでブルーシートのロールのものを買ってきて使っています。サイズは2種類、90センチのロールと180センチのロールのものを床に敷きます。サイズが自由にカットできるロール状のものがコスト的にも安く一番使いやすいかと思います。家具を搬入するところはもちろん、運搬の通路にもシートを敷きます。70%といっても組み立てたIKEAキッチンの重さはかなり腰にきます。家具を引きずったりすれば床も傷がつきますが、家具にも傷がつきます。なのでブルーシートを養生として利用するのは家具を引きづった場合でもすべりがよく、シートは薄いため段差もなく都合がよいのです。
2 家具の搬入
搬送された家具を現場内に取り込みます。バリアフリーの歯科医院であれば平台車があるのがベストです。というかマストです!!重くてごついIKEAの家具に体力だけでの挑みかかってはいけません!傷つくのは現場の仕上済みの壁と家具と人間です。一人で運ぶよりは二人で運ぶのがよりいいです。なので搬入の際は偶数の人数で考えましょう。そうすれば家具も現場も人間も誰も傷がつかないはずです。搬入なんて家具を運ぶだけだからと油断してはいけません、すべての作業はここから始まります。
3 各セクションへの配布
現場内は限られたスペースです、家具を置く場所を考えて取付の順番を意識する必要があります。治療スペース、滅菌消毒スペース、待合スペース、受付カルテスペース、それぞれのセクションに近いところまで仕分けをして運び込みます。その際に気を付けたいのは一度置いてしまった家具を移動したり、重ねたりすることで慎重に運んだ家具が破損の危機に直面します。なので取付が最後になるものを奥のほうへ、最初に取付するものを手前のほうに搬入する必要があります。例えばキャビネットを設置しないと天板はおけないので、キャビネットより天板は奥にあるのがいいですよね。ではキャビネットの前には何を取付しないといけないか・・・と考えながら配置しましょう。
4 家具の取付
ここからやっと家具の取付になります、IKEAキッチンは何度も言いますが重いです!!作業は二人一組でするのがいいと思います。壁面収納の場合、吊戸棚など上部に固定する家具から取付していきます、そしてその下のキャビネットを設置して天板を載せます。IKEAキッチンはモジュール家具です、キャビネットはテーブルの脚の代わりです、脚の上にカウンター(天板)を載せれば消毒スペースの家具が出来上がります。脚代わりのキャビネットだから、現場のサイズにこだわらず自由にレイアウトできます。キャビネットを置いて隙間ができたらそこにゴミ箱をレイアウトしたり、オートクレーブを配置したりすれば歯科医院オリジナルの消毒家具が出来上がります。各セクションによって取付する手順は変わりますが、基本は同じです。上部の家具を固定してから下部の家具を取付します。
5 電気給排水設備の取付
家具の取付が済んだら、コンセントやLAN、給水、給湯、エアー、バキュームの配管を取付をします。例えば流し台の家具の中に事前に打ち合わせしたレイアウト通りに給排水、給湯、コンセントがあるはずです。キャビネットの内部に排水管と水栓金具(いわゆる蛇口的なもの)の配管が出ていますので、それを現場の配管とつなぎます。ここにさらにフットスイッチなども取付します。だんだん歯科医院の家具っぽくなってきます。レセコンを置くキャビネットには、各チェアから伸びてきたLANケーブルが相当な数出てきているはずです。そこにハブを置いてPCをつないで・・・。益々歯科医院っぽくなります。
6 クリーニング
家具内に電気設備、給排水設備のつなぎや配管を済ませたら家具だけでなく現場全体のクリーニングをします。大切な医療機器を入れる前に現場内のほこりやごみを片付けて、ここで工務店や建築業者から現場の引き渡しとなります。ここまでの仕上げ工事で建築はおしまいです、なのでクリーニングは引渡し前の最終チェックの工程となります。現場内に工事の忘れや、傷などがないかよく確認してから鍵をもらってください。
7 医療機器の設置とその付帯工事
ここから医療機器の設置となります各メーカーさんが一斉に搬入し、あっという間に設置が完了するはずです。多分慣れたメーカーさんなら、床の養生や壁のあて止め保護板なども持参し搬入してくれます。器具によってはスタッフさんとレイアウトの最終確認をしてから、カウンターにエアーやコンセントの配線や配管の穴あけなどを行います。そこはメーカー急そがせたとしても先生やスタッフさんが納得してから穴あけ位置を決定して下さい。メーカーはその器具の使い方のみしか理解していません、先生やスタッフさんが運営全体を考えて、使いやすい一番いい位置を決定してください。
8 最終備品の取付
医療機器が並んだら最後の仕上げです。ここからはスタッフさんや先生と実際に使う様子を想像ではなく、実際に並べたり合わせてみてから細かい備品の設置を決めます。このあたりからはメーカーも工務店も居なくなってからの作業になることが多いです。ましてや設計士やデザイナーはもう来なくなります、でも私たちの仕事はここからです。レストランでいうと、最後の一皿(デザート)の盛り付けと同じくらい大切な工程です。起承転結の結です。レストランのシェフはコース料理のこの結の部分を大切にしています。ここで失敗したらお客様はリピーターにはなってくれません。そんな大切な部分を人任せにするデザイナーは残念ながら、一級(建築士)であっても一流ではないですね。
9 完了 以後の調整
工事が終わり内覧会が行われて、通常の運営をしてしばらくすると使い方が変わってきます。変わってくるというよりも、本来の使い勝手がやっと先生もスタッフさんも見えてくるという感じです。それまで何か月も打ち合わせをしても、医療機器のメーカーと何度も打ち合わせをしても、どれも正解とは言えないということです。正解は3か月後、6か月後、1年後にちゃんと出ます。IKEAキッチンを使ってよかったと皆さんが思うのはここからです。オーダー家具では考えられない変更が、合理的に低予算でいつでも可能です。家具の調整には大げさな建築工事も要りませんし、デザイナーも不要です。ここで「分離発注」の効果が出てきます。
いかがでしたか?歯科医院での家具の取付手順はざっとこんな感じです。こういった作業の費用と家具本体の費用を集計したものが家具工事なります。
先生方が銀行から借り入れした大切な資金が、こういった手順で使われているという事が少しでも感じていただけたでしょうか?取付費や組立費のような人件費はなかなか下がらないのが実情です、そうなると家具本体のコストを抑える努力が不可欠です。でも安ければなんでもいいというわけにはいきません、だからと言って歯科医院だから高くなるという考えは間違えています。高くなるには、その理由が重要です。
先生方の手元に請求書が届くまでにいったい何が起きているのか?購入ルートによって上乗せされる経費や紹介料やリベートなどの暗黙の経費が乗っているのでは?考えたことはありますか?
このブログをここまで読まれた先生方はきっといつか、手元に届く見積の金額が適正かどうかをご自身でも判断できるようになると思います。本日は長文となりましたがいつかこの記事がお役に立てる日がくればうれしいです。
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