分離発注って何?

歯科医院で使うには

今回の記事が10記事目となります、この記事からいろいろな人に見ていただけるようにしていきたいと思っています。これまでに上げた記事も時々リライトしながら内容を見直していきますので、何卒よろしくお願いいたします。

このブログは歯科医院の計画に役立つ情報のみに特化した内容にしています。歯科医院の工事費用の中でも家具工事の費用は新築の場合でも改装の場合でも大きな金額になる項目です。また家具工事に伴い電気設備工事や給排水設備工事、通信工事、機械設備工事(バキュームやエアー)が付帯工事として発生します。歯科医院の工事項目の中で、歯科医院にしかないノウハウが家具工事の中にはいくつもあります。その専門性から医療と名がつくだけで高額な付加価値がつくものがいくつもあります。でも歯科医院でしか使えないもの、レストランでしか使えないもの、住宅でしか使えないもの、そのセレクトはそれほど難しいものではありません。施工業者からまたは設計事務所から、図面と見積が提示されたとき内容と価格を先生方が判断する際のひとつのアィデアにしていただけるように私たちが普段使っている家具や材料、予算についても公開していく予定です。

これから歯科医院の計画を始める先生方が、工務店や設計士との関係を構築していく中でよりよい内容で適正な価格を理解し工事を進めていくために役に立つ内容を書いています。これまで私たちのチームがお手伝いをした歯科医院さんの写真やかかった費用なども併せて公開していきますので、工務店や設計士との打ち合わせをする前に予備知識として読んでいただければ金額交渉に役立つことになると思います。今後このブログからさらに踏み込んだ質問や問い合わせがあれば、いつでもお問い合わせに書き込みしてください。https://ikea-dekiru-dental.com/otoiawase/

さて今回の記事は「分離発注」についてです

前に書いた記事でも(https://ikea-dekiru-dental.com/sika-ikeakichenkoji-1/)分離発注について少しだけ触れました。

 歯科医院の工事計画を進めの場合に、この分離発注というやり方はメリットがあると私は思います。昨今ネットによる材料の仕入れが普及し、中間マージンがかからない買い物の仕方がすすみました。それまで代理店を通さないと買えなかったものが、今はネットに「品番」と「価格」を合わせた検索すれば、ほとんどのものをより安く早く手配できます。

このやり方を建築工事の中に取り入れられないかと考え、私たちが設計している歯科医院ではこのやり方を設計の初期段階から採用しています。

なぜ初期段階がいいのか?

設計がすすみ家具図がすべて「オーダー家具」もしくは「代理店からしか買えない既製家具」で話が進んでからでは、先生方は図面の変更を設計士や工務店に言えなくなってしまうからです。本来はお金を払う先生方が主導権をもって進めていくはずの打ち合わせが、なぜか工事業者主体になってしまっている・・・こんなことはありませんか?

大きな予算のすべてを支配しているのは、工事業者なのか?先生なのか?私がご紹介を受けて現地にお邪魔した際に、「すでに決まっている工事内容に変更を促す敵」とみられ、たとえ現場での提案が医院にとって利益のあるものであっても、「遅い」「間に合わない」という感じで前向きには受け入れてもらえないことが何度もありました。その際に思ったのは「どうしてお金を払う先生が、やりたいと思う事ができないのだろうか?」という事です。先生方の中には「このままでいいのだろうか」と疑問や「もっとよくできないか」といった希望があるはずなのに、歯科医院ファーストの業者さんはいったいどのくらいいるのでしょうか?

私が建築工事に携わるようになり30年近くになります、それまで飲食店、旅館ホテル、美容系店舗、大型量販店、ショッピングモール、公共施設、住宅や古民家など様々な建築に施工業者としてまたは設計デザイナーとして携わり過ごしてきました。歯科医院さんとの関りは今年で12年くらいでしかありません。でも私が今までお世話になったほかの業界の設計士や工務店との経験から、あきらめなければ建築工事では出来ることが無限にある事を学びました。先生方の理想と同じ志を持つ設計士なら、対応はできることばかりです。なのになぜそれを追求する努力が優先されないのか?それは余計な手間をかけるほど残る経費(利益)が、減っていくからと思われても仕方ありません。余計な手間こそ、医院にとって一番大事なことなのに・・・・誰のための仕事なのでしょうか???

そうならないために「分離発注」という考え方は先生にとっても業者にとっても、バランスのいい関係をつくる、とてもいいやり方です。

分離発注」とはどんなやり方でしょうか?

簡単に言うと、仕事内容によって分離して発注するというやり方です。

工務店に一括ですべてを発注するのではなく、電気が得意な人に電気工事を任せる、水道工事が得意な人に給排水設備工事を任せる、家具が得意な人に家具工事を任せる。というやり方です。

工務店が仕事をする場合、電気も水道も家具もすべてを任せてもらい工事を請け負う(一括発注)のが通常のやり方です。そして工事は工務店の監督がすべてを把握し、現場で指示するのがこれまでのやり方でした。

でも今は違います、というか工務店の工事のやり方が変わったのかもしれません。そもそも監督さんは現場に常駐(毎日)していますか?何軒もの現場を掛け持ちで走り回っている監督さんではありませんか?各業者さんに鍵を預けて、またはキーボックスを設置して現場の出入りを業者に任せていませんか?先生が来る時だけ予定を合わせて現場に来るというやり方が最近は多くみられます。

それが建て売り住宅のような既成化された同じ作りの建築ならば、そのくらいの合理化をしないと低価格にならないため致し方ないかと思います。。でも歯科医院は商業施設です、やらなければいけないことが沢山あり、医院ごとに治療方針も違うため既成化はできないと思います。そうなると現場の内容を把握しているのは監督だけではなく、主要な業者も監督に準ずる対応ができるのが理想です。

歯科医院でいう主要な業者とは?

1 木工事 柱や屋根の構造体を含み建築工事の中で大きな予算範囲を占める。すべての大工仕事や現場の天井、壁、床の造作や補強を担当する業者 工務店が主に請負うメインの工事項目です。

2 電気設備工事 今の時代、電気なしでは歯科医院の運営はできません。電気は照明やコンセントだけではなく映像配線やPC配線、エアコンや換気扇の電源や、音響設備以外にも多くの設備に必要になります。

3 給排水設備工事  給水給湯排水、バキューム、エアー、口腔外バキュームなど歯科医院にとっての動脈的な設備を施工しています。

4 家具工事 家具工事は前の1.2.3の工事に関連し運営にかかわる意味ではすべてのエリアで必要になります。家具工事は仕上げの工事でもあり医院の運営に大きく影響します。

工務店は建築全体を管理する「施工管理」という工事項目を請け負ています。施工管理には現場の工事をスムーズに進めるための交通整理の役割が含まれており、工程表でスケジュールを管理したり搬入や搬出の優先順位を決めたり、現場内でトラブルが起きないように管理する業務が含まれています。この施工管理は工務店にしかできない業務となります。なので先ほど挙げた1.2.3.4の主要な工事項目を管理する業務を担うのが工務店の役目になります。

ここで「分離発注」の話に戻ります、1の大工工事は工務店が担うことが必定ですが、2.3.4の工事項目は工務店の下請け業者が通常請負います。下請け業者という事は、場合によってはどの業者でも対応ができるとも言えます。ならば工務店の下請け業者以外で先生から直接工事を請負って現場に入ることができれば、工務店が下請け業者の工事項目に上乗せしている会社経費を削減できます。

私たちが設計している歯科医院では、工務店に見積もりを依頼する際に「分離発注」で家具工事または電気工事などを分離した場合でも、「施工管理」については全ての工事について管理する経費を見積もり内に入れる条件を付けています。つまり最初から「分離発注」を希望すれば、そのように工務店は予算組をしてくれます。それが先生からの工事の請負条件ならば、手を挙げた工務店は全体の施工管理を自分の請負工事以外(別途工事とも言います)も含めて管理してくれます。この場合、設計士の仕事が増えます。「設計管理」(図面通りできているか管理する業務)として指示する業者が工務店以外に2.3.4の業者にも情報を送ったり、打ち合わせをしたりしなければならないからですか。なので嫌がる設計士もいます。しかし設計士を選定するのも先生です、設計士を決める際の条件として「分離発注」にしたい旨を伝れば誠意のある設計士ならばきょうりょくしてくれるはずです。またはそれができないもしくは、やめたほうがいいと進める設計士を選ばないという選択もできます。設計士は世の中にたくさんいます、工務店はメンテナンスなどを考えて地元の業者でと考える事は多いですが、設計士は工事が終わったら来なくなる事がほとんどです。どうしてもこの設計士に任せたいと先生がお願いする場合でも、分離発注の条件くらいはのんでもらってはどうでしょうか?当然ながら歯科医院は設計士のものではありません、リスクのほとんどは先生が負うことになるのです。それならば設計士も含めて自分のコントロールがしやすいチーム作りが工事後も含めて歯科医院には必要ではないでしょうか?何より自分のやりたいことが実現できない設計士に高額の設計料を払いますか?この人しかいないとあきらめないで、チームに本当に必要なメンバーをじっくり探してみてください。その努力は想像以上に大きな効果を生みます。

分離発注で経費の管理がしっかりできれば、欲しい医療機器が買えるかもしれません。

医療施設は建築業界の中では手堅い顧客とみられています。建築の知識がない先生方は「とてもいい顧客」なのです。逆に建築業者に医療機器の知識はありません。なので建築の立場を優先する先生は「とてもいい顧客」ですがは「医院の理想を優先する先生は建築業者にとっては「とてもめんどうな顧客」になります。欲しい医療機器を我慢して、建築業者にとって「いい顧客」になっても建築業者は設計士も含めて、工事か終わったら必要以外には医院に来ることはありません。でも買えなかった医療機器は患者さんの役に立ち、スタッフさんの仕事を助けます。さてどちらを優先したいですか?分離発注をすれば今よりも有意義な資金計画ができるかもしれません。このように先生の意志が優先される建物が可能なら、同じく医療機器にも分離発注のやり方は対応できます。さらに建築だけではなく銀行や不動産業者、医療メーカーや小物に至るまで資金計画すべてに「めんどうな顧客」になっていただきたいです。そういったことの一つ一つが事業の成功につながります。

せめて4の家具工事だけでも分離するくらいは出来ない方がおかしいと私は思います、何か裏があるのではと疑いたくなります。

よく聞く話で歯科ディーラーが紹介してくれる業者からはマージンのにおいがプンプンします。「利によって人は動く」といいますが、自分に利のある方を押してくるのは営業の本質でもあり会社員としては当然かもしれません。でもその費用は先生から出ます、医院の利益より自分の利益が大事な業者でチームを作ると、いろいろな方面から中間マージンやリベートに感染してしまいます。先生が患者ファーストをめざすように、医院ファーストを考えてくれるチーム作りをするための分離発注です。先生の希望や理想を実現してくれるメンバーはルフィの仲間たちに匹敵します(ワンピースですね)!また逆に工務店や設計士にもメリットがあると言えます。特に歯科医院の場合、手間のかかる2.3.4の工事項目のリスクを回避できるのはありがたいのではないでしょうか?ある意味自分の得意な分野のみ請負えるので、メンテナンスのリスクも減り工事費のロスが減ります。そして設計士、工務店という場合によってはお互いをホロウしあえる関係に違う流れ(分離発注)を組み合わせることで現場での緊張感が高まります。私の嫌いな、なあなあの関係にならないのです。

建築工事には昔からダークな部分が存在します。大きな資金が絡むためお金のにおいに敏感な人たちが群がって、実際に仕事をする人にお金が届く前に少しずつ目減りしてしまう傾向があります。それはしかたないとは思いますが、医療業界の専門性という囲い込みは物の価値を歪めてしまう場合があります。IT化が進みすでに「問屋」という業務で中間マージンを操作する時代は10年前に衰退しています。だれもが本気で求めれば底値を知ることができます、むしろ素人さんのほうがプロよりも柔軟に物事の真実にたどりつけます。

分離発注」になれば、先生は契約をするそれぞれの業者に直接お金を渡し仕事をしてもらえます。請け負う業者は、工務店の下請けではない直請になるため先生の希望を直接聞いてくれます。当然メンテナンスもダイレクトにやってくれます。工務店は自分の得意な分野を請け負い、下請け業者への責任も分散するため経費を抑えて仕事が受けられます。設計士は専門性の高い業者が責任をもってくれる分、設計管理が大幅に楽になり、その分設計料は安くなるはずです。そして工務店も設計士も分離発注で請け負った業者も自分のリスクを自分で担ってもらいます、例えば工事保険や労災などです。(ただし工務店には施工監理の業務として現場のリスク保険分は経費に計上してもらう必要があります)

設計士、工務店、それ以外の業者、3社に自分が請け負った分のリスクを引き受けてもらい、3社に上下関係を作らないチームにしましょう。チームのリーダーは先生です。これなら3方良しの関係ができます。これならば無理せず永くお付き合いができます。かりに工務店が倒産しても、仮にどれかの業者がいなくなっても、その業者のみ新しいメンバーを召喚すればいいので全体としてメンテナンスのリスクは減ります。どんな大きな工務店でであれ、担当者(監督)が退社していなくなると下請け業者ともつながらなくなる場合があります。絶対に大丈夫という事は「一括発注」でも「分離発注」でもありません。だからリスク分散のため「分離発注」は、医院にとって有効な手段だと私は思います。そして医療業界の闇を排除するためにも「手間のかかる手段」をお勧めします。楽な手段は人任せで大きな費用が闇の中に消えていく可能性があります。どんなことであれ疑って、今よりもいいやり方はないかと模索する先生に同じ志の業者が集まります。自分の医院のスタッフを自分が面接で決めるように、業者の選択にもしっかりとエネルギーを使ってください。

永くなりましたが、なんとなく「分離発注」のイメージはお分かりになりましたか?

今回書ききれなかった事をまた別の機会に書きたいと思います。「なんだか面倒くさそうだ」と思わずにどうか面倒な(手間のかかる)ほうの道を選んでください。そこには新しい出会があり人生に厚みが増す結果が待っています!

きっと人間力のスキルアップができます!

めざそう「めんどうな顧客」!!

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