「歯科医院の改装工事」その1 チーム作りと設計の選択について

ケーススタディ

今回は医院の改装工事をする際に必要な業者の選定について書きます

出来るだけ休院日を少なくして改装工事ができないものかと誰もが考えています。

そもそも患者さんが増え、売上が上がり、在庫置き場が狭くなり、スタッフさんの増員などが出てくると「改装」という言葉を思い描くようになります。またどんなによく考えられた設計であっても、使っていくうちにズレが生じてきます。たとえば機械のサイズが変わるとか、新しい設備が増えてレイアウトが変わってしまうといった「物質的なズレ」や、スタッフさんが辞めてしまい、新しいスタッフさんが入りレイアウトの改善希望があったり、他の医院の見学に行った際に導入したいやり方を見つけたときなどにおこる「人的なブレ」です。どちらのブレについても、すぐにできる簡易的な改善では追い付かないような変更を考えた際に改装工事へと話が進んでいきます。

医院を開業して1年または3年、5年または10年と改装工事の工事レベルは年数に比例しておおきくなります。

改装前の消毒スペース

1年目なら隙間に在庫だなを増やす程度とか、2年目なら空いている部屋にチェア増設をするとか、5年目なら増築してチェアを増やし患者さんやスタッフさんの導線を見直すとか。10年目ならトイレや水廻りを見直し、受付カウンター周りを整理したり傷んだ壁や床を新しく貼り替えたり。1年目より10年目、10年目より20年目のほうが改装工事の規模は大きくなるのは仕方ない事です。医院は医療行為をおこなうための商業施設です、使っていけば老朽化もするし新しい設備への対応も余儀なくされます。

最近ではコンピューター機器の増設に伴い、WIFIの受信不良や映像などの大容量データの取り扱いによる機器の増設などが既存設備では対応できないことなども挙げられます。

改装後の消毒スペース IKEAキッチンのみで工事

10年前にどんなにお金をかけたからと言っても、そのままその先10年使えるものと使えないものが出てくるのは仕方がない事です。スマートフォンをはじめとした家電の進化と同じようにペーハーレスの未来に向かって、医療業界も常に進化しています。さらに気候温暖化問題、地震の問題、持続するコロナ過、隣国の戦争による社会的不安など、医院の運営をしていくだけでも大変なのに、自分だけでは抗えない問題が山積みです。

だからと言って医院の運営はこれからも続いていきます。それはどの事業でも同じですが、生きていくためにするべき社会貢献を停めることはできません。改装工事は患者さんファーストの医院にはとても有効な起爆剤になりえます。新築のリスクとは違い、既存にあるものを利用し、それを改善または部分的に撤去し新しく増設する。

売上が0ではなく既存の患者さんがいる状態での改装ならばリスクを抑えて工事する事ができます。

患者さんにとってもこれまで定期的に通っていた医院が、きれいで使いやすくなれば何もデメリットはありません。そして来なくなった患者さんに対してDMによる案内をすることで再来院のきっかけを作ることできます。またきれいな医院になればスタッフの新規採用のもしやすくなり、既存スタッフさんの意識の活性化にもつながります。このように新築のようなリスクを負わずに、リフレッシュのきっかけを作れる改装工事には大小の効果が期待できます。

さてそれではどのように設計すればいいのでしょうか?

改装後のチェアまわり

もしも当初の設計がどれほど立派な先生が考えたとしても、10年先を見越し機能が衰えない建築などは不可能です。家電機器やコンピューター機器とは違い、建築資材には時代に合わせた進化があります。特に最近では建築メーカーのSDGsなどの賛同により、これまでのスクラップ&ビルドだけでは済ませられない環境に配慮した建築が求められています。それはコストにも反映されています、さらに燃料の高騰などにより建築資材がリーマンショック以降、値上げするばかりで下がることはありませんでした。去年は建築業界以外でも話題になった「ウッドショック」があり、更に今年(2022年)4月以降は建築業界のほどんどの資材メーカーが値上をしています。

上のことからこれまでの予算計画で実現できたことが、今後はその計画を一部見直さないと実現できなくなりそうです。

改装前の消毒スペース

それは「まあ1000万あればできるでしょう」とざっくり考えるのが難しくなったという事です。

10年前のデフレのイメージを考えてはいけません、インフレは確実に進んでいます。「安い日本」のままではないという事です。これまで1000万で買えたものが800万分しか買えなくなっています。残りの200万はどこに行ったのか?それを追求すると建築工事を請け負ってくれる業者がいないくなります。どの業界でも同じなのですが、材料と燃料が上がり環境に配慮したコストを世の中で数字にすれば、コストはこれまでよりも上がるのです。

改装後の作業スペース

そんな中で改装工事の予算を考える場合、工事費はこれまで以上にシビアにチェックする必要があります。そしてこれまで何度も書いてきたとおり「分離発注」のやり方や「IKEAキッチン」を利用した医院の家具の提案は、これからの改装工事にこそ適していると言えます。

さらに設計料についてもこれからはしっかりと見直す必要があるのではないでしょうか?

通常は総工費のパーセントなどで設計費用を決めることになりますが、そうなると材料費が上がれば設計費用も上がるという事になります。同じ図面の枚数で同じ内容の図面を書いたとしても工事費が上がれば設計費用上がるのは正しいのでしょうか?

備品配置後の作業スペース IKEAキッチンのみで工事

このような状態になっても、設計士によっては分離発注や入札の手間を嫌う方もいます。

「そんなやり方で工事を誰がまとめるのですか?」と言われることもあります。私は自分が設計の立場である場合、工事をまとめるのは設計管理と現場監理の二人だと思っています。設計士だけが優秀でもダメなのです。紙に書いた図面だけで現場を掌握するのは無理です、必要なのは柔軟に物事をまとめる力です。設計管理とは設計した図面通りに出来上がるか管理する仕事です。なので図面への執着が強いと工事費の柔軟な対応ができなくなります。

設計管理のやり方にはいろいろあります。「施工図」を業者に書かせてチェックを念入りにするのも一つのやり方ですが「施工図費用」は医院の負担となり成果に対して図面費用の負荷が大きくなるため、大規模な建築工事でない限り、現実的な手立てとは思えません。またはほかに定例会議などで現場に赴き工程や仕上がり状態を都度確認するのも設計管理です。それならば設計士の負担だけで済みますが頻繁に現場に入らないと管理ができません。

なので現場には設計管理と現場監理、ふたりの協力が必要なのです。

それぞれが協力しあう事で経費の削減ができ、それぞれの専門分野の業者が連携しあえば工事もスムーズに進み無駄な経費も減ります。そういった内政の努力なしでは工事費をより最適なものには出来ないと思います。自分だけのことを考える業者が一人でもいれば、たとえそれが設計であってもメーカーであっても結局は上手く結果を出せません。

まして改装工事は既存の設備や建築ありきの内容になります。壊してみたらこんなはずではなかったという事が頻繁に起こります。改装工事の予算計画は複雑です、危険費用をある程度見越して請負わざるを得ないこともあり、コントロールは難しいものです。

備品配置後の消毒スペース IKEAキッチンのみで工事

そして世の中もまた複雑ですが便利にもなっています、たとえばネットでだれでも建材が買えます。エアコンや便器などの住設機器も中間業者を通さなくても買えます。これまで定価で買っていたものがスマホで品番を打ち込むだけで「世間での流通価格」を見ることができます。それはスニーカーでもブランドバックでも同じではないでしょうか?先生方が買い物をする際にしていることを建築にも当てはめるだけのことで予算の実態を把握することができます。

例えば大量生産のものはその気になれば、だれでも最安値で買えます。もちろんリスク負担は増えます、メンテナンスしかり、故障時の修理しかり。ただメーカーが補ってくれる保証は最低限ついていますからその範囲内ではリスクは最小限です。今どきは銀行にお金をあずけるよりも投資にまわしている先生方も多くいるはずです。

それと同じで「より最適なところに資金を投入する」ということです。

コントロールができないのは施工の工事費です。なので機器のリスクは自分が担い、取り付けのリスクは工事業者が担えばそれにかかる経費も最低限となります。それは「投資型保険」を「投資」と「保険」に分けるのが最適というのに似ています。「投資は投資、保険は保険、混ぜるな危険」と言いますよね。適正なリスクを担えば適正な価格になります。

改装工事のディスプレイ

なのでそんな細かな部分まで管理ができる設計士ならば費用対効果は大きく、改装工事のメインとなってもらうのが理想です。でも自分のデザインややり方に固執したり、予算計画と医院の運営に中途半端な関与しかしない設計では、工事費のパーセンテージで設計費を払うのははたしてその価値があるのかどうか疑わしいと思います。

医院の改装工事はこれから先の医院の在り方を考えるうえで、とても重要なターニングポイントとなります。奇抜なアイデアだけではこの先の5年、10年の使用に耐えられません。場合によっては改装前のほうがよかったと患者さんから言われるかもしれません。いいデザインとは長く使えて飽きの来ないものです、改装工事をただのイベントではなく患者さんやスタッフさんがいつまでも安心して通える医院にするための改善工事にするために、令和の時代に合わせた考え方で対応できる設計士がより求められるのではないでしょうか。

改装工事後のディスプレイ

分離発注しかり、ネット購入による資材の支給しかり、リスクの分散化しかり、IKEAキッチンしかり、ありとあらゆる手を尽くし改装工事を理想の結果に持っていけるのは先生方の選択にかかっています。それは設計の選択がスタートになります。

今回の改装工事はどんなやり方が適正なのか?

だれと組むか?どんなチーム作りをするか?

チームにはスタッフさん、協力業者さん、メーカーさんそれぞれの得意分野を担ってもらいます。誰かひとりだけではなくメリットもデメリットもチームで共有できる関係を作ることが、改装工事の結果にも表れます。イベントが終わったら二度と会わない・・・そんな関係にならないように工事後も医院を見守る関係になれるチーム作りが改装工事には必要だと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました