建築材料の値上げ2022春

費用について

今回は建築費用について書きたいと思います。

現在は2022年5月です。ロシアのウクライナ侵攻やコロナの感染、世の中はどちらを向いてものっぴきならない状態が続いています。そんなニュース満載の日々の中で、しずしずと物の価格が上がってきています。私たちの日常の中ではすでに当たり前なのでしょうが、ありとあらゆるものが値上がりの様相に代わってしまいました。「魚肉ソーセージの長さが1.5センチ短くなった」とうちのスタッフから聞いた時には、庶民の生活のいたるところがすでに置き換わっているのだと痛感しました。

さて建築資材も例外なくそうゆう状況になってきています。具体的にこれが10%増、これは20%増といった線引きはしていませんが、価格を上げるか内容量を減らして価格を据え置くかは建築業界にも当てはまります。照明器具メーカーは各社ともに新カタログの発刊から値上げした価格表示となっています。クロス、床、内装材料も同じく価格の改正が行われ、まだカタログが追い付いていない商品は都度その価格を問い合わせる必要があります。これは中間マージンについては・・・

利益分が・・・一瞬にして無くなる状況ということです

利益がなくなったとしても商品に対する責任やリスクは負うことになります、またスタッフの経費は変わらずかかり、工事に対するリスク保険の保険料も売り上げに対して掛かりますから、少なからず利益なしでは誰も請け負えなくなります。なので価格改正前に契約していたものは改正前のままですが以後の見積や購入は新価格となり、その商品にかかる経費も値上げとなります。

イケアの商品も価格が上がりました。

今年の1月に購入すれば2枚1セットで税込み1500円だった棚板が、現在は同じ商品が1700円になりました。それはたった200円のことかもしれませんが、30000円分の棚板を購入するとこれまでは20セット買えましたが、これからは17セットしか買えないという事です。3セット分が値上げ分という事ですね。ほかの商品もおおよそ10%から20%の幅で値上げがありました。

(ちなみにこれまでのグリーンのIKEAキッチンのカタログはまだ発刊されていません。HPにて単価を確認する必要があります)

半導体の不測による商品の供給≦需要もあり、世の中の値上げの波はまだ続きそうです。

さて、先生方はこの状況でどのように医院の未来を考えますか?

価格が落ち着くまで工事は控える・・・それとも安く請け負ってくれる業者を探す?

「既存医院をそのままあと二年使って待てば状況も変わるでしょう」と考えたとしても、現在お使いの医院の償却は進んでいき老朽化は加速します。また近隣に新しい医院は作り続けられ、患者さんは今よりも充実したサービスを提供する新医院へと移っていくかもしれません。さらにスタッフさんもいい条件の求人が出れば転職を考えるかもしれません。果たしてじっと耐えるだけでこれからの不況の波を受け流すことはできるでしょうか?

一番高い時に工事をしなくても・・・と考えるのは当然のことです。でも一番高い時とはいつなのでしょうか。来月にはもっと上がるかもしれませんし、半年後には逆に下がるかもしれません。ただし大手メーカーがカタログ表記で定価設定を上げた以上、その価格が次回カタログ発刊時に金額を元に戻しますということには絶対になりません。2008年のリーマンショックの影響が大きかったころが「建築の底値」のピークでした。その後2011年に東日本大震災がありそこから、建築工事はそれまで下がりきった価格帯を取り返すように値上げを10年にわたって続けてきました。12年前に改装や新築をされた先生が、現在2022年に全く同仕様で医院を建てたとしたらその当時の1.5倍から2倍の価格になるのではないでしょうか。それほど年々建築工事の価格は上がっています。

ではこれから建築を考える先生方は一体どうやって、新医院の計画を進めていけばいいのでしょうか

新築、改装を考える歯科医院さんはこれまで以上に事業計画をしっかりと立てることが必要になります。これまで通り「新築して医院が新しくなれば患者さんは増えるのだ」と考えるも危険です。日本の経済成長期はすでに遠い昔のことになっています。30年間、人件費は上がっていない先進国が日本なのです。

今後は先生方の知識と行動力が成功を左右します。デーラーに勧められた商品は本当に最安値なのか?ほかの医院の先生は同じ商品をいくらで買っているのか?新規参入のメーカーがこれまでのメーカーより安価で業界に入り込んできていないか?やるべきことをやりつくして納得して購入したか?中古で手に入れるルートはないか?以上のような事を医療機器のような定価または販売価格が設定されているもは「比べて買う」ことができます。

でも建築工事に定価はありません。

建築業界は現在も昔も変わっていません。日本の風土に合わせた季節感を考え、工事を請け負う工務店が工事を請け負い、その工事内容を管理する設計士が間に入り建築基準法と消防法、保健所などの公的機関が定めた規則やルールに従って造り、引き渡し以後は安全に維持する努力をしていく。

これまでのやり方では、これまで以上の金額が必要になってしまいます。

「値上げがほぼ全業種にまで広がっていますので、予算はどこが作っても高くなりますよ」というのが常識だと言う業者もいます。ただし定価のない建築工事には「比べる」という常識が当てはまらない部分がたくさんあります。たとえば工事業者は土木工事が得意な工務店や、商業施設が苦手な工務店、年間の売り上げが住宅がほとんどの住宅メーカー、少人数で地域に密着した工務店などなど会社の規模も事業形態もバラバラです。当然利益率もバラバラです。

医院の建築を考える場合、当然ながら入札はしなければなりません。

5社入札をすれば5種類の工事費が出ます。同じ図面、同じ条件なのに価格は5種類です。ただし出来上がりも5社とも同じではありません、これは図面の解釈が5種類あるからです。それについては「どれが正解」というのが無いのも建築の世界です。ゴールへの道筋は工務店によって、または監督によって違うのです。

正解とは?引渡しの際に先生方が納得できればそれが正解となります。

それほど曖昧な建築工事を完璧に管理できる設計士はいるのでしょうか?それもまたいないと思います、なぜなら建築士は現場に常駐していないからです。見てないなものを完璧に管理できるはずはありません。そんな曖昧な業界です。完璧な工務店も完璧な設計士もいないということです。では高い金額ならば最適か?これまで書いてきたとおり、それはあり得ません。最適を決めるのは先生なのですから。

最適を求めるのであれば、これまでに何度も話をしてきた分離発注やIKEAキッチンなどの既製品、入札による業者選択のような、手間がかかっても先生が納得できる組み合わせを考えるべきです。

職人には得意な事と、不得意なことがあります。得意な事は一番近道で完成できますが、不得意な事は遠回りなのか近道なのかすら判断できないものです。だから得意な人にその分野を任せるのが近道であり、無駄な経費の削減になります。それを分野ごとに手配するのが分離発注です。設計士にも同じことが言えます、そういった発想ができる設計士と出来ない設計士がいます。工事の設計費用のパーセントばかり気にしていたり、手間のかかる作業を否定したり、これまでの常識にとらわれて本来の目的である顧客への努力義務を顧みない設計士を何度も見てきました。これまで当たり前としていたことや常識と考えていた事はすでに古い情報となっています。過去の実例をどれほど誇っても、現在の情勢とは条件が違うのです同じものは出来ません、それは過去の出来事なのです。

なので手間のかかるほうが、正解と心得ましょう!

手間をかけて努力した事であれば結果は満足できるものになります。でも工務店にしろ設計士にしろ人任せではどこかに後悔が残るのではないでしょうか

「そんなことはわかっている」と思っている先生方、でも先生方が思っている以上に世の中の動きは流動的で複雑です。常に新しい情報が必要になっています、昨日聞いた情報が最新ではないと疑う気持ちを持たないと「これまではそれでよかったのに・・・」と言うお年寄りのようになってしまいます。

建築費が上がったと言っても、何を基準に上がったのかすら誰もわかっていないのも建築の世界です。ならば値上げされてしまった工事費を、違うやり方で最適化すれば値上げ幅と同等の削減が可能なのも建築の世界です。小さなことからでもいいのです。

あきらめなければ、きっと努力は報われます。

建築業界にもこれまでとは違うイノベーションが求められています。いつの時代にも少数派の中にそんな業者やメーカーはいるものです。あきらめず先生方と波長の合う工務店や設計士を探しましょう、そうすれば先生方の貴重な時間も節約され新しいことにエネルギーを向けられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました